仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 結婚式は一生に一度のもの。だから日にちにもこだわるご夫婦は多い。

 そうなると難しくなってくるのは、ほかとの予定の兼ね合いである。レンタルのドレスが貸し出されていたり、そもそも式場が埋まっていたり、すり合わせが難しい。

 頭の痛い思いをすることも少なくなかったけれど、目の前のふたりが重要視しているのは『式を無事に終えること』の一点のみだった。

「これからどうぞよろしくお願いしますね。一宮(いちみや)さん」

「こちらこそ、右も左もわからないことばかりですが……」

 神妙に頭を下げた旦那様を、くすくす笑いながら奥様がつつく。

「右も左もわかってたら困るわよ。初めての結婚式なのに」

「あっ、そっか」

(籍は二年前に入れたそうだけど、まだ新婚みたいに見える)
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