仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 そんなやり取りを私に見られたことが恥ずかしかったらしく、旦那様が照れたように頬を掻く。

(私もこんな夫婦になりたい)

 以前は思わなかった感想を、最近は胸に抱くようになっていた。

 きゅ、と手で握った胸元。その奥はじくじくと痛んでいる。

「それではまた来月の十六日に……同じ時間でよろしいですか?」

「はい!」

「変更があればお気軽にご連絡くださいね」

 ふたりが帰り支度を終えて席を立つ。その間も奥様は旦那様の忘れ物を指摘したり、旦那様が慌てたりと微笑ましいふたりだった。

 先にドアまで向かい、開けておく。

 外までお見送りをするまでが私の仕事だ。


 担当するご夫婦の打ち合わせが終わったあと、私は打ち合わせをした部屋とは違うフロアで昼食をとっていた。
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