仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 さら、と髪を撫でられて一気に体温が上がる。

「……嫌だったか?」

(嫌じゃない!)

 心の中で返してもまったく意味がない。

 そこに来てようやく、私はサキさんからのメッセージを思い出した。

『されることを受け入れて』というあの言葉は、まるでこうなることがわかっていたかのようだ。

(急に和孝さんがこういうことをしてきた理由はわからない、けど)

 勇気を振り絞ってそろりと手を動かしてみる。さまよわせた手を恐る恐る和孝さんの背中に回した。

「……嫌じゃ、ない……」

 シーツの衣擦れよりも小さな声だった。

 でも、自分の気持ちをようやく伝えることができた。

「……無理しなくてもいいんだからな」

「無理なんて……」

(無理なのはこの状況の方……!)
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