仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う～御曹司は新妻への欲情を抑えない～

　相手の様子を窺いながら、嫌われないようにしよう。そんなふうに無駄な時間をだらだらと過ごしてきたせいで、関係を進展させられていなかったのだから。

　せっかく和孝さんも同じ考えだと知ったのに、あんな失態を犯してしまうとは情けない。

　デスクの上に並んだ過去のフェアのパンフレットをぼんやり目に映す。頭にはまったく入ってこなかった。

（ああもう、本当にどうしよう）

　嫌われてはいない。たぶん。

　世田くんに嫉妬したり、ベッドの中で抱き締めてくる程度には好かれている。

　この件については引き続きサキさんに相談し続けていた。

　今までは私の話を聞いて答えるばかりだったのに、最近はサキさんから提案されることが多い。その内容は大抵、隠していることをさらけ出してみたらどうか、というものに帰結した。