仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「え?」

「無理しなくていい、ここで寝るだけだからって……」

 ずっと、私の胸にその夜のことはしこりとして残っていた。

「そう言われたから、この結婚は恋愛結婚じゃないって思ったの。和孝さんにとってはご両親のためか、会社のためか……少なくとも私を好きでした結婚じゃないって」

「いや、だってあんな紗枝さんを抱けるわけないだろ」

 直球で飛び出した単語に意識を飛ばしかけたけれど、ぎりぎり耐えた。

「暗がりでもわかるくらい震えて、顔も真っ白で。無理矢理結婚したせいでこんな顔をさせてるんだと思ったら……。……手なんて出せるわけない」

「じゃあ、次の日からもなにもなかったのは……」

「君がいいって言うまではなにもしないって決めてた。これ以上俺から迫るのは申し訳なさすぎて」
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