仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 向かう先は寝室だった。

「普通の夫婦みたいなことをしたかったし、されたかった。……紗枝さんは?」

 寝室のドアを開く前に聞いてくれる優しさが染み入る。

(こんなときでも気遣ってくれるんだ)

 第一印象がよかった以上に、女性扱いされたことがうれしくて和孝さんに惹かれた。

 どんな私でもそうしてくれることを知って、また恋に落ちる。

「私も。……したいし、されたい」

 和孝さんの首に手を回し、顔を埋める。

 返答はない。

 その代わり、寝室のドアがゆっくり開かれた。
< 284 / 394 >

この作品をシェア

pagetop