仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
短編:あまあまな夜
ひい、と小さく声が漏れる。
これまでの経験上、夜眠るときにベッドでそんな声を出すなんてありえないことだった。
それなのに、ここしばらくはそれがありえないことからありえることに変わってしまっている。
「か、和孝さん……」
恐る恐る振り返ると、至近距離に和孝さんの顔があった。しかも満面の笑みを浮かべている。
「なに?」
「なに、じゃないよ……」
声が震えるのは、和孝さんの手ががっつり私の腰を抱き締めているせいだ。
夫婦関係が改善してから、無事に新婚夫婦らしい生活になった。ただし、本当にこれが普通の新婚夫婦のやり取りなのかと言われると、私にはもうわからない。