仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「してほしい……?」

 おそるおそる聞いてみると、私を撫でていた手が止まった。するりと後頭部を滑って、首の後ろに添えられる。

「してほしいって言ったら、してくれるんだな?」

「う……」

「してほしい」

 私がもごもごしている間におねだりされる。

 せめて見つめられていなければそっぽを向けたかもしれないのに、和孝さんの熱っぽい眼差しは私を捉えていた。

「あのキスって難しくない……?」

「あんまり考えたことはないかな」

「和孝さんは上手だからそうやって言えるんだよ」

「上手だと思ってくれていたわけだ」

 おもしろがるように言われてはっと口をつぐむ。だけどもうしっかり聞かれてしまっていた。

「だったら、やっぱり今日は俺からしようか」

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