仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「ふーん……?」

「それに今あるのはとりあえずで揃えたものだから」

 そうなのかとまた尋ねようとして、目的のコーナーへ到着したことに気が付いた。

 キャビネットが右に左にところ狭しと並んでいる。サイズの差はかなりあり、色や形状、引き出しの数など選択の幅が広い。

「紗枝さんはどういうのがいい?」

「和孝さんが選んでるところを見たい」

「あんまりおもしろくないと思うけど」

 和孝さんは不思議そうに言うけれど、まったくもってそんなことはない。

 私は仕事の顔を覗かせるときの和孝さんが好きだ。だから別に家で仕事をしていても構わないし、急ぎの電話が来てしまっても気にしない。和孝さんにとってはうれしくないことだとしても、だ。

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