仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 急に近付いた距離が私の心臓を騒がせた。

「じゃあ、貯金しないと……」

「頼ってくれていいのに」

「海外旅行って高いんだよ」

「君は俺の収入をわかってないな」

 楽しそうに言うと、和孝さんは私に顔を寄せてついばむようにキスをした。

「行きたいなら毎日でも連れて行くよ。世界中どこへでも」

 きゅんと胸がいっぱいになる。和孝さんと出会うまでは『ときめくときには胸がきゅんとする』などという事象を信じていなかったのに、今ではたしかにその通りだと思わされていた。

 ありがとうと言いかけて考え直し、首を横に振る。

 和孝さんが少し驚いたように目を瞬かせた。

「行きたくない?」

「ううん。世界中に行かなくても、私が一番大好きな場所はここだよ」

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