仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 水場が近いために一段高くなっており、中のスペースもこぢんまりとしていた。真ん中にはテーブルがひとつ。なぜか畳というちょっと変わったスペースだ。

「さっきの発注書を見たけど」

 絵美さんがお茶を淹れながら言う。

「もっちーさんの好きそうな式をすることになりそうね。それこそ理想の式みたいな」

「わかりますか?」

「このお仕事も長いもの」

 ふわりとお茶の甘い香りが漂う。

(……あ、いい匂い)

 自家製のお茶は花を加工して作られたもので、ハーブティーに近い。複数のハーブと花と、季節によって乾燥したイチゴやオレンジが含まれたこのお茶は、店頭でも数量限定で売られている。

「いいわね、理想の式があるなんて。いつも羨ましくなっちゃう」
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