仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 いただきます、と同時に手を合わせて食事を始める。今日のおかずは魚の煮付けときんぴらごぼうだった。

「珍しいな。友達と?」

(……来た)

 聞かれるかもしれない質問だとは思っていた。

 一気に緊張が高まり、心臓が早鐘を打ち始める。

「ううん、ひとり。……和孝さんはその日、暇?」

 自分の鼓動がうるさくて返事が聞こえないのではと不安になる。

 和孝さんが考える時間は一瞬だったのに、一時間も経ったように思えてしまった。

「悪い。その日は予定があるんだ」

(だめだった)

 持っていた箸を取り落としそうになり、指に力を入れる。すぐに声を出すのが難しくて、ゆっくりと深呼吸した。

「……急な話だもんね」

「ごめん」

「ううん、私も……ごめんなさい」
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