シンクロニシティ【中学生日記】
 そのときであった。

「ぎゅるるるるぅ〰〰」

(なに何?! アタシのお腹? 鳴っちゃった! もぅ、アタシったら最低!)

「ごめん… わたし、お腹空いてるのかな」
「あ、オレも今、あれを考えてた」
「えっ? 何?」

「すきや!」

 きゃー! 好きって言われた! 
 奈緒の全身に、電気が走る。

 一瞬の硬直。ブレーキ・ハンドルをギュッと握ってしまい、自転車が前のめりになった。態勢が崩れる。
危ない、倒れる……

 その時…… 
 奈緒の目の前に、手が差し出された。とっさにその手を掴む。
 手と手が、しっかりと握られていた。


 シンクロニシティ…… 
 意味のある偶然。言葉が、心が、手のひらが…… 重なる。

( 唇も、重ならないかな…… )
 心の声が溢れた。
 みるみるうちに頬が高潮してくるのが自分でもわかる。

「奈緒ちゃん、大丈夫?ねぇ、お腹が空いた。100均のあと、すき家で牛丼食べようよ」

 テツローが脳天気に、そう言った。

 そんなことより、アタシ顔が熱いよぅ。変だと思ったんだ。関西弁で告るわけないじゃん。もぅ……
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