好きじゃない
明日から夏休み。

「昨日寝たの1時なんだけど」

眠そうな奈穂が言う。

1時まで龍樹くんとSNSでやりとりしてたらしい。

どうやら出だし順調な様子だ。

私は毎日蓮と帰っていた。
とは言っても、あまりにもいつも通りだし、何かがあるわけではなく。

でも不思議と蓮と一緒なだけで怖くなくなった。

行きも同じタイミングになるから一緒に行くことも多い。

すごくそれが心強かった。

テラスから蓮が顔をピョコッと覗かせる。

「今日部活ないんだけどさー昼飯どうする?」
「私、家で食べるつもりだった」
「まじかー一緒食おうよ」

蓮がうちのクラスに入ってきて、私の隣の席に座る。

「奢り?」
「ちげえよ」

私のイタズラに割とムキになってる。
冗談だよ。

「いいよ、ご飯食べよ」

私の返事に「おー」と適当な返しをしてテラスに消えていった。

「カナと麻木蓮っていつになったら付き合うの?」

若菜が言う。

「そういうんじゃないんじゃない?事実婚とかあんじゃん」
「事実婚って結婚かよ」
「でも別に『付き合う』とかってもっと曖昧なんじゃない」

私が口を挟むこともなく、会話が二人によって展開されていく。

付き合うとはまた違う気がする。

男友達だ。
なんとなく。

都合がいいっていうか、友達としても男としても使えるって言ったら言葉が悪いけど。

どこか、蓮がそこにいるなら恋人なんていなくてもいいや、と思ってた。

なんか、事足りる、と言ったら言葉が悪いけど。
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