好きじゃない
「じゃあ、夏おつかれってことで、花火大会始めます!!ヒューーーーー!!」

龍樹くんが一人で開会宣言をする。

蓮が「夏おつかれって」と呟く。

みんなそれぞれ持ってきた飲み物を手に乾杯する。

何にもなかったら、すごく楽しいはずなのに。

あのまま夏休みに入っていたら、普通に楽しかったはずなのに。

蓮とは目が合わない。

私もつい奈穂と若菜と話す。

奈穂は龍樹くんともいい雰囲気なのが伝わってくる。

私はただ花火を何度も持ち替えては、合間合間に飲み物を口にする。
何も気にしてないフリ。

「蓮となんかあった?」

若菜。

「なんーーにもない。」

私は勢いよく火を吹き続けてる花火に目をやる。

「夏休み中は?」
「だから、なんーーにもない。」

「なんーーにも」に力を込める。

ふと視界の向こう側に見える蓮に視線を向ける。

いつもの楽しそうな蓮だ。

と、突然スマホの着信音が鳴り響いた。

蓮がワタワタしながら花火をバケツにつけて、スマホに出る。

「うん、うん、今友達と遊んでた」というところまで聞こえたけど、その場を去っていったから、それ以降は全然聞き取れなかった。

龍樹くんも洸くんも私に目を向けてきた。

「蓮、元カノとなんかあった?」

龍樹くんの口から石のような重い言葉が降ってくる。

「ああ、うん。わかんない。」

適当に笑いながら返す。

「元カノって、去年別れた先輩だろ」

洸くんが龍樹くんに確認する。
龍樹くんは私に気を遣う様子で、曖昧に流す。

「俺、もう完全にカナちゃんなんだと思ってた」と洸くんが私を見た。

龍樹くんは洸くんを止めるように、腕を軽く殴る。

「飲み物減ってきたから買い出し行くぞ」

空気を読んで龍樹くんが提案する。
またも奈穂と龍樹くんが二人で近くのコンビニに買い出しに出た。

その場に若菜と洸くんと残される。

この二人はストレートに言葉をかけてくるタイプ。

「蓮、先輩とヨリ戻したのかなー」

洸くんが言う。

「だって去年別れてんでしょ」

若菜が言う。

とそこへ蓮が小走りで戻ってきて、私たちは慌ててそれぞれ花火を手にする。

私たちの表情を見て、蓮が「なんかあった?」と言う。

洸くんが「いや」と否定する。

蓮は不思議そうに「ふうん」と言うと、新しい花火を選び始めた。

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