好きじゃない
私は無意識に花火に火をつけながら、そんな蓮を見ていたらしい。

突然に、今日初めて蓮とバッチリ目が合った。

どうしよう。

どんな表情をすればいいのか、分かんないや。

蓮が立ち上がってまっすぐこっちへ向かってきて、ストンと腰を落とした。

久しぶりにすごく近くてドキドキする。

「元気?」
「うん、元気だよ」

開口一番、そんな会話をする。

「蓮は、何してたの、毎日」
「んー暇つぶしに学校行ったり」
「は?学校?なんで?」

久しぶりだったけど、口を開くといつも通りだった。

なんだ、分かんないけど私が気を遣ってただけかもしれない。

「お前、何もしてないだろ。全然焼けてないし」
「だってやることないんだもん」

久しぶりに蓮のカッと笑う口元を見た。

「蓮さ、元カノとどうなった?」

やっと私は聞きたかったことを聞いた。
蓮の目は少し固まって、その後私の目から逸らされた。

「たまに連絡したり、会ったりしてる」

正直に答えてくれた。

「ふーん」

私は終わった花火をバケツまで捨てに行って、また新しく貰ってくる。

「そのことでさ、」と蓮が切り出す。

私の目をまっすぐに見る蓮。

「うん」

私はちょっと緊張を覚えながらも、そう答えて蓮の隣に腰を落とした。

「ちょっと頑張ってみようかなと思って」

しっかりと蓮の口から放たれた矢は、私の心臓を撃ち抜くようだった。

「夏祭り、さっき電話で誘ってみた」

金縛りにあったかのように、声が出なかった。

私は何をショック受けてんだろう。

背中を押したのは私だ。

「すごい、やるねー」

やっと出てきたのはそんな言葉だった。

「夏祭りって来週じゃん。やっば」

頑張って笑顔を作る。

「ちゃんと決めてこいよー」

そう言って背中をバシッと叩く。

「いてぇわ」

蓮が笑う。

ああ、なんだろう。
なんかすごく胸が痛い。

蓮の出した答えを、私はすぐには受け入れられなかった。

あんなキスをすんじゃねえよ。

私の花火はいつのまにか火を消していた。
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