好きじゃない
蓮は掃除の時間になって、すごく申し訳なさそうに私たちの教室に飛び込んできた。

「ごめんごめんごめんごめん!」

その勢いに少し圧倒される。

「なにが?」
「受付当番、すーーーっかり忘れてた!ごめん!ごめんなさい!」

あ、それか、と私も気付く。

「どうせ誰も来なかったし、全然大丈夫だよ」

私は普通のテンションを保って言う。
蓮は私の言葉に安堵したようだ。

「ほんとごめん。」

顔を上げた。

「でさ、」と続けた。

「文化祭までちょっと部活忙しくてさ、しばらく行けそうにないんだよね。」

すぐに分かった。

「ああ、うん、気にしないで。全然大丈夫。」

私は笑顔で応える。

「大丈夫だよ」

念押しで付け足す。

「ありがと」

やっと蓮の表情に笑顔が戻る。
つい私もホッとした。

「じゃあ、そういうことだから、よろしく」

蓮はペコッと頭を下げると、ゆったりと自分の教室の方に戻っていった。

なにか、私の心の中が空っぽになった。

火曜日の昼休みも、そして夏休みまでという期間限定だった帰り道も、私と蓮との時間はこうしてなくなった。

短かった。
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