好きじゃない
今年の文化祭のポスターが校門に貼られた。

「飛翔」という文字と、飛行機のような翼を背に、紙を斜めに飛ぶ男。
色とりどりの蛍光色のインクが、下から上に弾き飛ばされてる。

躍動感溢れるその絵の作者は、「画・麻木蓮」という表示を見なくともすぐに一目で分かった。

めっちゃいいじゃん。

心の中で呟く。

蓮と話さなくなって1ヶ月が経っていた。

たまに廊下で会うと「おう」くらいは言うけど。

季節はすっかり秋になっていた。

奈穂と龍樹くんはまだ続いてる。
学校でも一番目立つお似合いの二人となっていた。

蓮と会う前まで、私はどうやって過ごしてたんだろう。

なんで今になってこんなに何もない人間になってしまったのか。

「いい出会いないかね」

若菜が言う。

「文化祭に期待するしかないっしょ」

私も言う。

蓮が今どうなってるのか、さっぱり分からなかった。

文化祭でパフォーマンスもあるから、余計に準備が忙しいと龍樹くんが言っていた。

私は誰も知らない美術室でのパフォーマンスを見てる。

あんなの見たら、みんな蓮を好きになるよ。

飛翔のポスターを思い出す。

みんな蓮を好きになる。
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