好きじゃない
エンディング
火曜日の12時半。

いつものように事務室によると、慣れた口調で女の事務員さんが「麻木くんがついさっき借りてったよー」と教えてくれた。

久しぶりの受付当番。

少し緊張しながら図書室に向かう。

すっかり季節は秋になってる。

はじめての時は春だった。

図書室のドアは開けられていた。

相変わらず意欲が空回りしてるコーナー。

カウンターを見ると、ピョコッと蓮が顔を上げた。

私はいつも通り一度サザエさんを取ってからカウンターに向かう。

「久しぶり」
「おう」

軽く挨拶。

蓮の手元にはサザエさん第1巻。

「来年はサザエさんで絵を描いてるかもね」

私が言う。
蓮が鼻で笑う。

「放課後暇?」

久しぶりに聞く蓮の誘い文句。

「忙しいと思う?」
「暇だな」
「何?」

蓮がサザエさんをパタンと閉じる。

「ん?一緒帰ろうと思って」

すごく照れ隠しのようなあっさりとした口調。
シャイにも程があるだろ。

「私も都合いい女だなー」

チラリと横目で睨む。
蓮は頭を掻く。

「分かってるよー」

蓮が拗ねる。
逆ギレかよ。

笑う。

私はまた都合のいい女になるんだろうか。
いつも次こそはちゃんと愛されようと思うんだけど。

蓮はどうなんだろ。

蓮の今の気持ちが知りたくなる。
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