好きじゃない
珍しくさっさと帰る準備をする。

若菜は文化祭から爽やかくんと連絡取ってる。

奈穂は相変わらず龍樹くんと仲が良い。

「やっと春が来たわー」

若菜が言う。

「だねー氷河期長かったー」

私もノビをしながら答える。

ドアをコンコン鳴らす音がする。
見ると蓮が立っていた。

若菜がニヤッと笑う。

「じゃー、先帰りまーす」

私はカジュアルに言うと、席を立った。

ここ数日、また蓮の噂が忙しい。
元カノとヨリを戻しただの、また私と付き合ってるだの。

実際のところ、蓮はずっと誰とも付き合ってないことを私だけは知ってる。

まだ15時前。

「川沿い行こ」
「うん」

蓮の斜め後ろをついていくように歩く。

蓮はチャラい。
こんなにも私の気持ちを振り回す。
本心は今もなんだか分からない。

私が靴を履くと、蓮が右手を出してくれた。
左手を乗せるとグイッと引き寄せてくれる。

そのまま昇降口を出たところから手を繋ぐ。

簡単にキスもするし、手も繋いでくる。
キスした直後に、他の女の方にいく。

本当なら好きになんかならない、こんなサル。

でも好きになったのは私だし。

「いろいろ噂立ってるよ」

わざと言ってみた。

「知ってる」

クールな声。
全然気にしてない様子だ。

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