好きじゃない
川沿いの堤防に出る。
蓮は自転車を押しながら私の隣を歩く。

「蓮はさー」

私はまっすぐ前を見たまま声をかけた。

「もう先輩のこと吹っ切れたの」

蓮が私を見てるのが分かる。

「なに、気にしてんの」

ぶっきらぼうな返し。

「気にするに決まってんじゃん」

私もぶっきらぼうに返す。

「まー美人だったけどな」

胸がチクッとする。
つい蓮の顔を見てしまった。

「嫌いにはなれないけど、付き合うとかはないんだろうな」

蓮は斜めに目を落としながら言う。
なんだよ、それ。
曖昧なんだよ。

私の足が止まる。

蓮が振り向く。

「蓮の気持ちが知りたい」

そう言ってしまってから後悔する。

蓮だって自分の気持ちなんて分からないだろうに。

蓮は俯いて頭を掻く。

これでまた終わりになるかも。
失敗した。

「いいや、いいやいいや、気にしないで」

私は笑いながら蓮の元へ駆け寄る。

「なし。今のなし」

そう笑って前の言葉を取り消しても蓮は俯いたままだ。
失敗した。

「好きだよ」

蓮がゆっくり私の目を見て言った。

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