月に魔法をかけられて
藤沢様に伝えたって、社長に伝えたってことなのかな?

私は首を傾げながら、クロークの中にいたマネージャーらしき男性に声をかけた。

「すみません。ルナ・ボーテの者ですが、招待客の忘れ物などは大丈夫でしょうか?」

「大丈夫ですよ。皆さま全員お荷物をお持ちになられました。本日はありがとうございました」

「こちらこそありがとうございます。あとすみません。支配人とご連絡を取っていただくことは可能でしょうか? うちの藤沢がご挨拶をしたいようなのですが」

「えっ? 支配人でしたら少し前に藤沢様にご挨拶しておりましたが……」

「あっ、社長の藤沢ではなくて、副社長の藤沢が支配人にご挨拶をしたいようなのですが」

「はい、藤沢副社長ですよね? 確かにお2人でお話されてましたが……」

「あっ、そうですか。ありがとうございます……」

私はその男性にお礼を言うと、再び首を傾げながら副社長を探した。

どういうことなんだろう?
副社長、もう支配人と会えたってこと?
会場のチェックのことも副社長聞いてるのかな?
私も一応終わったから報告したいんだけどな。

副社長を探すけれど、3階のフロアには見当たらない。

いつの間にか、瞳子さんやあゆみちゃんたちもいなくなっていた。

みんなどこに行ったのかな?

フロアをきょろきょろと見渡して探してみるけれど、知っている顔はどこにも見当たらない。

顔を左右に動かしているところで、肌が露出した自分の腕が目に入った。

あっ、そう言えばジャケット……。
瞳子さんに預けたままだった。受け取らないと……。

フロアを歩きながら瞳子さんを探していると、副社長が前から歩いてきた。
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