月に魔法をかけられて
「山内さん、どうした? 何かあったのか?」

声が聞こえて振り向くと、いつからそこにいたのか、副社長が私の斜め後ろに立っていた。

「あっ、いえ……。ちょっとびっくりしたものですから……」

「びっくり? 何が?」

眉間に皺を寄せながら私の顔を見る。

「えっと……。あの……、WEBのCMに……」

「WEBのCM?」

「はい……。もしかして副社長もご存知だったのですか?」

確かめるように視線を向けると、何のことを言っているのか?といった顔をしながら、首を傾げている。

「こ、これなんですけど……。会社のWEB CMに私が映ってて……」

私はもう一度WEB CMを再生した。

CMを見た副社長は、みるみるうちに目を見開きながらとても驚いた表情に変化していった。

これはおそらく副社長も知らなかったことなのだろう。

「これはいったいどういうことだ?」

CMが終わった途端、怒ったような表情で私に尋ねる。

「私もよく分からなくて……。さっき小林さんから教えてもらったばかりで……」

「小林? マーケの小林のことか? マーケから聞いたのか?」

「は、はい……」

「くそっ……、また瞳子が勝手にやったんだな。あいつ……」

副社長は吐き捨てるように声を発すると、そのまま部屋から出て行った。
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