月に魔法をかけられて
*****

12月も残すところあと一週間となり、副社長は取引先への挨拶まわりで忙しく、私も年賀状の漏れがないかの最終チェックや年始の挨拶まわりで使用するハイヤーや手土産の手配などに追われていた。

そして、あっという間に仕事納めの日となった。

WEB CMについては、副社長があれから色々な部署を通じて言ってくれたらしいけれど、反響も大きく、話題性もあり売れ行きも好調のため、CMはそのまま継続されることになった。

副社長はあの日以来とても機嫌が悪く、仕事中はかなりピリピリとしていて、4月に就任した時のような状態に戻っていた。

私は明日から年末年始の休暇で名古屋の実家に帰るため、今日は仕事が終わったら彩矢と忘年会をしようと約束をしていた。

彩矢が薬膳鍋のお店を見つけたらしく、美容にもいいということで予約してくれたらしい。

『今から会社出るね。18時半にはお店に行けるよー』

今年最後の業務が終了し、定時を過ぎてから彩矢にLINEを送る。

すると、すぐにピコンとスマホに通知が表示され、

『OK。先に着いたらお店に入って待ってるねー』

と、彩矢からの返信が届いた。

私はタップして既読にすると、会社を出て駅へと向かった。
< 195 / 347 >

この作品をシェア

pagetop