月に魔法をかけられて
私は走りながら、とにかく隠れることができそうな場所を探した。

コンビニや住宅があれば助けを求めて入ることもできるのに、ここがどこなのか分からないけれど、街灯が少なく、すぐ横からは波の音が聞こえ、海が見える。

もう一度捕まってしまったら何をされるか分からないので、車が通れそうにない細い横道に入り、とにかく走った。

途中、靴が片方脱げてしまい、裸足のまま走る。

裸足で走り続けることで、足の裏に石や突起物が刺さり、激痛に襲われた。

それでも、どこか隠れる場所がないかと必死で探す。

すると、大きな公園の駐車場のような場所が見えてきた。

車はまばらだけれど、植樹がされているので、隠れることができるかもしれない。

私はその公園をめがけて走ると、鬱蒼と立ち並ぶ背の低いツツジの木の間に入り込み、身を潜めた。

鞄の中からスマホを出し、履歴から彩矢を探す。

恐怖と震えから、思うように手が動かない。

震える手でなんとか画面をスライドさせながら、彩矢の名前をタップした。

彩矢。早く出て……。お願い……。


ワンコールですぐに彩矢が出た。

「美月、今どこにいるの? 連絡ないから心配したじゃん」

彩矢の声が聞こえ、安心から涙が零れる。

「あ、あ、あ、彩矢……。た、た、助けて…………。お願い………」

「えっ? 美月、何があったの? どうしたの? どこにいるの?」

彩矢の声が急に私を心配する声に変わる。

「どこに……、どこか……、分からない……。だ、誰かに連れ去られて………。こ、怖い……、怖いよ………。彩矢………」

すると、ピカッと車のヘッドライトが光った。

さっきの2人組の車がこの公園に入ってきたようだ。

少し先の方で車を停めて、2人が車から降りてくる。

「おい、そんなに遠くまでは行ってないはずだ。探せ」

「こんなところにいるか? さっきの倉庫の方が怪しくね?」

2人でぶつぶつ言いながら私を探している。

「美月ー、美月何があったの? どこ? どこにいるの?」

手に持っていたスマホから彩矢の声が聞こえて、私は慌ててスマホを切った。
< 201 / 347 >

この作品をシェア

pagetop