月に魔法をかけられて
じっと息を殺しながら2人が立ち去るのを待つ。

2人は結構な時間をかけてあちこちを走って探しまわったあと、ここにはいないと思ったのか、また車に乗ってどこかへ行ってしまった。

少しだけほっとしながら、小さく息を吐く。

だけど、まだ油断することはできないし、もう一度戻ってくるかもしれない。

私はこの場所から動けずにいた。


鞄から再びスマホを出して、彩矢にタップする。

「美月! 大丈夫?」

コールする間もなく、彩矢の声がすぐに聞こえた。

「あ、彩矢……。た、助けて………」

恐怖で涙が溢れ、言葉が出てこない。

「美月、その場所動いちゃだめよ。今助けに行ってるから。分かった?」

「彩矢……。でも私……、どこにいるのか………、分からない………」

「大丈夫。美月のいる場所は分かってるから。だからね、絶対見つからないようにして、その場を動いちゃダメ。今向かってるから」

「彩矢……」

「大丈夫。美月、大丈夫だよ。もうすぐだから。頑張って」

彩矢の優しい声に安心するように頷く。

すると、一台の車が駐車場へと入ってきた。

すぐにドアが空き、人が降りる。

だけど、そのシルエットは彩矢ではなかった。
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