月に魔法をかけられて
ガチャリ──。

ドアが開き、瞳子さんと一緒に副社長が入ってきた。

2人の登場に、どうしていいかわからず、私はまた固まってしまう。

(瞳子さんのお家なのに、副社長が来て大丈夫なのかな?)
(旦那さんに見つからないの?)

いろんな思いを巡らせながら、2人の顔を交互に見る。

「啓太、お姉ちゃんは今疲れてるの。だからママのところにおいで」

瞳子さんが啓太くんに声をかけるけれど、啓太くんは『いやだ』と言って私にくっついたまま離れない。

「啓太、そんなにお姉ちゃんにくっつくと、壮真が怒っちゃうよー。早くママのところにおいで」

「やだ。ぼくはみづきといっしょにいるー」

今度は私の膝の上にまたがり、抱き着いてくる。

そんな啓太くんの姿を見て、瞳子さんが笑い始めた。

「壮真、ここにも強力なライバルがいたわね……。2人して同じ顔して………」

瞳子さんはツボにはまったのか、口元を押さえて大笑いしている。

副社長はというと──。

なんだかとても機嫌が悪そうな顔をしていて──。


「啓太、早くこっちにこい」

副社長が声をかけるものの、啓太くんは私の胸元で顔を埋めながら、パジャマをギュッと握り締めている。

副社長はそんな啓太くんを見ながら、諦めるように小さく息を吐いた。
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