月に魔法をかけられて
「もしかして美月ちゃん、啓太の父親が壮真だと思ってるのかな?」

それを聞いた副社長が、頬を赤くしながら急に不機嫌な顔になる。

「美月ちゃん、啓太はね、壮真の子供じゃないわよ。れっきとした私と主人の子供」

「えっ? でも………」

今度は私の方が理由が分からない。

(こんなに顔がそっくりなのに、副社長の子供じゃないの?)

「黙っててごめんね。私と壮真はね……、実は姉弟なの」

「えっ──?」

私は目を見開いたまま、両手で口元を押さえた。

(瞳子さんと副社長が、姉弟?)

2人の顔を交互に見る。

私の驚いた表情を見て、瞳子さんがまた大笑いする。

「びっくりしたわよね。ほんとにごめんね。でもね、このことはほとんど誰も知らないの。私が社長の娘だと知ったらみんなやりにくいでしょ。だから公表しないでってお願いしててね。会社でも一部の人たちと……、あっ、塩野部長はもちろん知ってるけどね」

「そ、そうだったんですね………」

すると

「俺と瞳子が夫婦なんて、どう見たらそう見えるんだよ。たとえ姉弟じゃなくても、こんな女は絶対に選ばねーよ」

副社長が呆れたような顔をしながら私を見た。
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