月に魔法をかけられて
「美月、うれしそうだな。何かいいことが書いてあったのか?」

「あっ……、はい……。副社長……、あっ、壮真さんはどうでしたか?」

「俺? 見たい? ほらっ、大吉!」

「えっ? 壮真さんも大吉ですか!」

「ああ。……ということは、美月も大吉?」

「そうなんです。なんか、すごくうれしくて……。初詣に来てよかった……。このおみくじは持って帰ろうっと」

きちんと元通りにたたみながら、大切にお財布の中に仕舞い込む。

「持って帰る? じゃあ俺も持って帰ろうかな。なんか、こんな小さなことだけど、大吉だとやっぱりうれしいもんだな」

副社長は笑顔で大吉のおみくじを眺めている。

「そうなんです。私、大吉のうえに、願いごとが早く叶うって書いてあって……」

「願いごと? 美月、そう言えばさっき長く願いごとをしたけど、何の願いごとをしたの?」

「えっ……。そ、それは言えません……。だ、だって……、他の人に言ったら叶わなくなるって言われてるから……。そ、壮真さんは、願いごとされたんですか?」

「ああ、俺もしたよ」

「おみくじには何て書いてあったんですか?」

「願いごと……?、あっ、願望か……。願望は、驚くことあれど慌てなければ叶うって」

「よかったですねー。願いごとが叶うって……」

「そうだけどさ。俺はそれより、待ち人が来るでしょうの方がうれしいかな」

副社長が本当にうれしそうな顔をして私を見つめた。



えっ………。
待ち人がくるって……。
それって……、副社長が待ってる人って……。
絵奈さん……のことだよね……。
< 237 / 347 >

この作品をシェア

pagetop