月に魔法をかけられて
すると、眠そうな顔をした副社長が、啓太くんに手を引かれながらリビングへと入ってきた。

「壮真、元旦の朝ぐらいもう少しシャキッとしたら……」

呆れたような笑みを浮かべて副社長に視線を向ける瞳子さん。

「シャキッとも何もねーよ。こいつさ、寝てる俺の上にいきなりダイブしてくるんだぜ……。朝からこいつはなんでこんなに元気なんだよー」

そう言いながら、啓太くんの頭をグシャグシャっとかき回す。

「やめろぉー。そうま、ぱんちだぁー」

啓太くんの小さなパンチを交わすように、副社長が啓太くんの身体をガシッと掴んだ。

してやったりという表情を啓太くんに向ける副社長。

本当に大きさの違う子どもが2人いるようだ。

「ほら、2人とも。早く椅子に座って。お雑煮が冷めちゃうから」

瞳子さんがそう促すと、啓太くんが私の隣の椅子にちょこんと座った。

「啓太、啓太の席はそこじゃなくて、パパの隣でしょ。そこは壮真の席だから、パパの隣に行きなさい」

「やだ。ぼくはみづきのとなりがいい」

ほっぺを大きく膨らませて、拗ねてるのか可愛い顔して瞳子さんを睨みつける。

その様子が何とも可愛くて、私はつい啓太くんの頭を撫でてしまう。

すると、啓太くんが横から私を見上げながら口元に小さな手を添えて私を呼んだ。
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