月に魔法をかけられて
「美月ちゃん、ごめんねー。片づけお願いしちゃって……」

支度を終えた瞳子さんたちがリビングへと戻ってきた。

「壮真、これから私たち3人で初詣に行って、そのあと直人さんのご実家にも顔を出してこようと思うの。帰りは夕方になるから、留守をお願いできるかしら?」

「ああ、わかった。夕方ってことは、飯はどうする? 帰って来てから食べる?」

「あっ、そうね。ついでに夜ごはんも食べてこようかしら……。ねえ、直人さん?」

「そうだな。瞳子も帰って支度するのが大変だし、食べて帰るか」

瞳子さんの言葉に直人さんが頷く。

「壮真、少し遅くなるけど、いいかな?」

私の驚いた表情を見て、瞳子さんはニコッと楽しそうな笑みを返すと、副社長の顔を見た。

「ああ。じゃあ、俺らも適当になんか食べとくわ」

「そうしてくれると助かるわー。美月ちゃん、そういうことで、ごめんね。お茶やお菓子、コーヒーや紅茶はここにあるし、ここにあるものは適当に何でも食べていいからね。あっ、そうそう、油や調味料はここね。お鍋もここにあるし、冷蔵庫には野菜やお肉も入っているから、ごはん作っても大丈夫よ」


えっ──。
瞳子さん………。


私が不安そうな顔をして瞳子さんを見つめていると、

「美月ちゃん、朝の話、ちゃんと壮真にするのよ。帰ってきたら送って行かせるから……。あっ、車の運転させるから、お酒は飲ませないようにね」

そう私の耳元で囁いて「行ってきまーす」と車に乗って出かけて行った。
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