月に魔法をかけられて

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「副社長、起きてください。副社長……」

相当疲れているのか、さっきから何度も起こしているのに、一向に起きてくれない副社長。

あー、こんなことなら石川さんの連絡先、
聞いておけば良かったな……。

このまま副社長を置いて帰るわけにもいかないし、どうしよう……。

起きてくれない副社長にどうしていいのか分からず、途方に暮れてしまう。

バーの中にいたお客さんも、少しずつ帰り始めている。

副社長が起きないので、私は先に支払いをしようとフロアスタッフに声をかけると、石川さんが既に支払いを済ませてくれていた。

再び副社長に声をかけ、どうにか起きないかと恐る恐る肩を揺らしてみる。

「副社長、起きてください。大丈夫ですか？」

「うぅぅ……ん……」

少し目は開いたものの、かなり眠そうで、またすぐ目を閉じようとする。

とりあえず、ここから連れ出さなきゃ。

私は副社長のスーツの上着とビジネスバックを持つと、なんとか副社長を椅子から立たせ、足元がふらつく副社長が倒れてしまわないように腕を引きながら、エレベーターホールまで連れてきた。

降下ボタンを押し、エレベーターが到着するのを待つ。

その間も、副社長は立ったまま目を閉じて眠り始める。


このまま副社長をタクシーに乗せても大丈夫かな？
この状態だと、タクシーに乗っても多分自宅の住所言えないよね……。

えっと、副社長のお家ってどこだっけ？
品川だったはずだけど、詳しい番地までは覚えてないな……。

う……ん。
タクシーに乗せたとして……。
もしタクシーの中でビジネスバック忘れたりすると大変だしな……。

それに、起きなくて警察なんか連れていかれたりしたら、今の時代『ルナ・ボーテの副社長が……』って週刊誌のネタになる可能性もあるし……。

でも、お家に帰らせなきゃいけないし………。
とりあえず、タクシーに乗せちゃおっか……。

あー、どうしよう………。