月に魔法をかけられて
「美月、俺もしていい?」

副社長はゆっくりと起き上がると足を床に下ろし、私を自分の腿の上に跨がせるように座らせた。

「こんな風に美月とおはようのキスができるなんて、夢みたいだな」

そう言いながら、チュッと唇にキスをする。

嬉しさと恥ずかしさが入り交じり、副社長の顔を見ることができず、無意識に俯いてしまう。

そんな私の顔を人差し指でクイっとあげると、「今のはキスとは呼ばない」と言って、ニヤリと笑顔を向けた。

そして、今度は触れるだけのキスではなく、長く唇を重ねる深いキスが落ちてきた。

緩やかに角度を変えながら唇が何度も重ねられる。

次第に激しくなっていくキスに、口から吐息が漏れた。

静まり返ったリビングの中で、唇が重なり合う音と漏れる吐息の音だけが聞こえてくる。

副社長は重ねていた唇を離すと、右手で私の左耳に優しく触れた。

指先は左耳の縁をなぞりながら、ゆっくりと唇を近づける。

私は何も考えられなくなり、副社長の首に腕をまわしてしがみついた。
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