月に魔法をかけられて
副社長の車で自分の家へと連れて行ってもらった私は、当面の服や着替え、化粧品などを長期旅行用の一番大きなスーツケースに詰め込んだ。

そして、キッチンから調味料やオリーブオイル、出汁パック、お玉やフライ返しなどを手に取り、紙袋に入れていった。

出掛ける前に副社長の家のキッチンを確認したら、ほとんど使用した形跡のないお鍋とフライパン、包丁とまな板は置いてあったけれど、調味料などは一切見当たらなかったからだ。

スーパーで調味料など一式を購入しようかとも思ったけれど、一から揃えるとなるとかなりの量になりそうだったので、当面は私が使っていたものをそのまま持っていって使おうと考えていた。

「よし。これで大丈夫だよね？」

パタンとスーツケースを閉じて、調味料などの入った紙袋と一緒に玄関へと運ぶ。

靴を履こうとして、「あっ！」と声をあげた。

「そうだ。靴！　一足だけってわけにはいかないよね……」

玄関横の収納扉を開けて靴の入った箱を確認しながら、その中の２足を取り出すと、もう一度スーツケースを開けて、その中に詰め込んだ。

大きな荷物を持って下に降りると、副社長がすぐに車から出てきてトランクを開けて、スーツケースを入れてくれた。

私たちはそのままショッピングモールへ移動して、お米やパン、野菜やお肉、お魚などを購入すると、再び副社長のマンションへと戻っていった。
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