月に魔法をかけられて
「美月、疲れただろ? 少しゆっくりして休んだら?」

副社長が3つのビニールに入ったたくさんの食品をダイニングテーブルの上に置いていく。

「ありがとうございます。その前に、買ってきた野菜とかお肉を下準備しながら冷凍していってもいいですか?」

「それはいいけど。そんなに無理するなよ。美月のごはんが食べたいとは言ったけど、俺は外食でも構わないんだから」

「全然大丈夫です。いつもお休みの時にはやってることだし。それより壮真さんこそ……、なにかコーヒーかお茶でも入れましょうか?」

「ありがと。じゃあ、コーヒーお願いしてもいい? 明後日から仕事が始まるから、メールとかスケジュールをいろいろチェックしておきたいんだけどいいかな?」

カーキ色のダウンジャケットを脱ぎながら、木製のオシャレなポールタイプのハンガーラックにそれをかける。

「美月のコートも貸して」

そう言って私のコートも受け取ると、同じようにかけてくれた。



副社長がソファーテーブルで仕事をしている間、私はキッチンでお肉を一食分ずつ小分けにしたり、ミンチをハンバーグにしたあと、きれいに並べながら冷凍していった。

そして今度はブロッコリーやスナップエンドウをゆでたりしながら、常備菜を作っていく。

ある程度、一週間分の献立の目途がついたところで、今日の夕食の準備へと取りかかった。

お米を洗って炊飯器にセットすると、ピーマンを千切りにしてごま油と塩昆布で炒める。

それが出来上がると、冷蔵庫から鯖を取り出し、熱湯をかけて臭みを取ったあと味噌煮を作り始めた。

その隣で、お豆腐と玉ねぎの味噌汁と作り、最後にアルミホイルにエノキやエリンギ、シメジを入れてバターとポン酢を落としたあと、それを綺麗に包み、オーブントースターの中に入れた。
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