月に魔法をかけられて
副社長は本当に美味しいのか、箸を休めることなく、無言でパクパクと口に運んでいる。
「このピーマン、なかなかイケるな。俺、ピーマンってそこまで好んで食べないんだけど、これ、ごはんがすすむわ」
その言葉通り、副社長の小鉢のピーマンは、既に残り少なくなっていた。
「足りなかったら、これもどうぞ」
私は目の前でこんなにも美味しそうに食べてくれるのがうれしくて、自分の小鉢を差し出した。
「それ美月のじゃん。大丈夫、それは美月が食べないと」
「私、他にもまだおかずがあるのでこんなに食べれそうにないし……。あっ、ピーマン苦手でしたら、無理されなくてもいいですけど……」
「食べていいんだったらもらう。ほんとにいいのか? 俺が食べても」
「はい。こんな風にいっぱい食べてもらえる方がうれしいです」
副社長のことが、今まで以上にどんどん好きになっていく自分がいる。
そして、優しい瞳を何度も向けてくれることに、とてつもない幸せを感じていた。
「なあ、美月。美月の味噌汁って、いつも揚げ玉が入ってるんだな」
副社長が不思議そうにお椀に箸を入れながら、汁を吸った揚げ玉を箸で掴んだ。
「あっ、これ、お寿司屋さんで教えてもらったんです」
「寿司屋?」
「はい。お寿司屋さんで飲んだお味噌汁が美味しくて、職人さんに聞いたら、お味噌汁揚げ玉を少し入れると味にコクが出るんですって。それ以来いつも入れてます」
「ふうん。そうなんだ。確かにこの味噌汁旨いんだよな……。ところで、寿司屋って誰かに連れてってもらったの?」
「はい。あんなとこひとりじゃ入れなくて……。って言ってもランチですけど……」
ふふっと苦笑いを浮かべながら副社長を見ると、副社長はお椀を持ったまま、怪訝そうな表情を私に向けた。
「誰? 男?」
「えっ? 誰って? 一緒に行った人ですか? 彩矢ですけど……」
「彩矢ちゃん? 彩矢ちゃんと寿司屋なんかに行くの?」
険しかった目元がふわりと柔らかくなり、手に持っていたお椀を口に運ぶ。
「そうなんです。夜は金額が怖いので、もっぱらランチだけです」
「そうか……。じゃあ、今度俺と一緒に寿司屋に行こうな?」
副社長は再び目を細めて笑うと、お味噌汁を全部飲み干した。
「このピーマン、なかなかイケるな。俺、ピーマンってそこまで好んで食べないんだけど、これ、ごはんがすすむわ」
その言葉通り、副社長の小鉢のピーマンは、既に残り少なくなっていた。
「足りなかったら、これもどうぞ」
私は目の前でこんなにも美味しそうに食べてくれるのがうれしくて、自分の小鉢を差し出した。
「それ美月のじゃん。大丈夫、それは美月が食べないと」
「私、他にもまだおかずがあるのでこんなに食べれそうにないし……。あっ、ピーマン苦手でしたら、無理されなくてもいいですけど……」
「食べていいんだったらもらう。ほんとにいいのか? 俺が食べても」
「はい。こんな風にいっぱい食べてもらえる方がうれしいです」
副社長のことが、今まで以上にどんどん好きになっていく自分がいる。
そして、優しい瞳を何度も向けてくれることに、とてつもない幸せを感じていた。
「なあ、美月。美月の味噌汁って、いつも揚げ玉が入ってるんだな」
副社長が不思議そうにお椀に箸を入れながら、汁を吸った揚げ玉を箸で掴んだ。
「あっ、これ、お寿司屋さんで教えてもらったんです」
「寿司屋?」
「はい。お寿司屋さんで飲んだお味噌汁が美味しくて、職人さんに聞いたら、お味噌汁揚げ玉を少し入れると味にコクが出るんですって。それ以来いつも入れてます」
「ふうん。そうなんだ。確かにこの味噌汁旨いんだよな……。ところで、寿司屋って誰かに連れてってもらったの?」
「はい。あんなとこひとりじゃ入れなくて……。って言ってもランチですけど……」
ふふっと苦笑いを浮かべながら副社長を見ると、副社長はお椀を持ったまま、怪訝そうな表情を私に向けた。
「誰? 男?」
「えっ? 誰って? 一緒に行った人ですか? 彩矢ですけど……」
「彩矢ちゃん? 彩矢ちゃんと寿司屋なんかに行くの?」
険しかった目元がふわりと柔らかくなり、手に持っていたお椀を口に運ぶ。
「そうなんです。夜は金額が怖いので、もっぱらランチだけです」
「そうか……。じゃあ、今度俺と一緒に寿司屋に行こうな?」
副社長は再び目を細めて笑うと、お味噌汁を全部飲み干した。