月に魔法をかけられて
「あなたたちがなかなか入ってこないから、私も出てきちゃったわ」
「あっ、お母さん。啓太が美月ちゃんから離れなくて……。美月ちゃん、うちの母です」
瞳子さんがお母さんに手のひらを向けながら紹介してくれる。
「はっ、初めまして。山内美月と申します」
急に緊張感に包まれてしまいつつも、深く頭を下げて挨拶をする。
「美月さん、いらっしゃい。お待ちしてましたわ。まあ、ほんと瞳子や主人が言うように、可愛らしいお嬢さんね」
お母さんがとても優しい笑顔を浮かべて私に丁寧に頭を下げた。
さすが元秘書というだけあって、所作がしなやかでとても美しい。
「瞳子も壮真も、こんなところで立ち話するんじゃなくて早く家に入ってもらったら。お父さんも中で首を長くして待ってるわ」
「そうね。美月ちゃんごめんね。どうぞあがって」
瞳子さんが抱っこしていた啓太くんを下ろす。
すると啓太くんは待っていたかのようにすかさず私の手を掴んだ。
「お母さん見て。啓太ったらすっかり美月ちゃんのことが気に入って、美月ちゃんから全然離れないのよ」
にこにこと笑顔を向ける啓太くんの顔を見守るように苦笑いを浮かべる瞳子さん。
「あらま、ほんとだわ。壮真、お嫁さんを啓ちゃんに取られてるじゃない。これじゃあ、啓ちゃんがお嫁さんを連れてきたみたいね。ふふふっ。啓ちゃん、お姉ちゃんは壮真のお嫁さんだから、ばあばと一緒にお部屋に入ろっか?」
「やだよ。ぼくはみづきがいいもん」
啓太くんは口を尖らせて私の足にしがみつく。
「あらあら。小さくても可愛い女性は分かるのね」
「そうなのよお母さん。啓太が美月ちゃんにべったりなもんだから、壮真ったら啓太にまでやきもち妬いてるのよ」
「啓ちゃんにまでやきもちを妬いてるの? 壮真も情けないわね」
瞳子さんとお母さんは楽しそうに副社長を見て笑っている。
この2人、かなりそっくりだ。まるで瞳子さんが2人いるみたい。
瞳子さんはきっと、顔も性格もお母さんに似たのだろう。
そんな2人に副社長は何も言うことなく、不機嫌そうな、呆れたような表情をして溜息を吐いていた。
「あっ、お母さん。啓太が美月ちゃんから離れなくて……。美月ちゃん、うちの母です」
瞳子さんがお母さんに手のひらを向けながら紹介してくれる。
「はっ、初めまして。山内美月と申します」
急に緊張感に包まれてしまいつつも、深く頭を下げて挨拶をする。
「美月さん、いらっしゃい。お待ちしてましたわ。まあ、ほんと瞳子や主人が言うように、可愛らしいお嬢さんね」
お母さんがとても優しい笑顔を浮かべて私に丁寧に頭を下げた。
さすが元秘書というだけあって、所作がしなやかでとても美しい。
「瞳子も壮真も、こんなところで立ち話するんじゃなくて早く家に入ってもらったら。お父さんも中で首を長くして待ってるわ」
「そうね。美月ちゃんごめんね。どうぞあがって」
瞳子さんが抱っこしていた啓太くんを下ろす。
すると啓太くんは待っていたかのようにすかさず私の手を掴んだ。
「お母さん見て。啓太ったらすっかり美月ちゃんのことが気に入って、美月ちゃんから全然離れないのよ」
にこにこと笑顔を向ける啓太くんの顔を見守るように苦笑いを浮かべる瞳子さん。
「あらま、ほんとだわ。壮真、お嫁さんを啓ちゃんに取られてるじゃない。これじゃあ、啓ちゃんがお嫁さんを連れてきたみたいね。ふふふっ。啓ちゃん、お姉ちゃんは壮真のお嫁さんだから、ばあばと一緒にお部屋に入ろっか?」
「やだよ。ぼくはみづきがいいもん」
啓太くんは口を尖らせて私の足にしがみつく。
「あらあら。小さくても可愛い女性は分かるのね」
「そうなのよお母さん。啓太が美月ちゃんにべったりなもんだから、壮真ったら啓太にまでやきもち妬いてるのよ」
「啓ちゃんにまでやきもちを妬いてるの? 壮真も情けないわね」
瞳子さんとお母さんは楽しそうに副社長を見て笑っている。
この2人、かなりそっくりだ。まるで瞳子さんが2人いるみたい。
瞳子さんはきっと、顔も性格もお母さんに似たのだろう。
そんな2人に副社長は何も言うことなく、不機嫌そうな、呆れたような表情をして溜息を吐いていた。