月に魔法をかけられて
「副社長、タクシーが到着致しました」
緊張しながら副社長室のドアをノックし、扉を開いてタクシーの到着を告げると、副社長はクローゼットのような役員用ロッカーについている鏡を見ながら、ネイビーのピンドットのネクタイを締め直していた。
初めて見るそんな姿に、なぜか見てはいけないものを見てしまったようで、心臓がドキンと大きく反応する。
「分かった。14時には戻るから、夕方のアポイント用の手土産を用意しておいてもらえるかな」
私を見ることなく、手際よくネクタイを締めるモデルのような姿に一瞬見とれてしまう。
わっ、ネクタイを締めてる姿も絵になるよね……。
「山内さん?」
ネクタイを締め終えた副社長が、ドアの前に呆然と立ち尽している私に視線を移した。
「えっ、あっ、はい」
「手土産の中身は任せるから」
「はっ、はい。かしこまりました。ご用意しておきます」
私は副社長室のドアを閉めると、その場から逃げるように急いで自分の席へと戻った。
バクバクバクバクと、心臓がかなりの速さで動いている。
瞬く間にじわじわと身体から汗が吹き出してきた。
顔がとっても熱い……。
私、なんで副社長のネクタイを締めている姿を
ずっと見てしまったんだろう……。
絶対、いつまで見てるんだ!って思われたよね……。
怒られなかったからいいようなものの、
金曜日の夜のことを聞かれたりなんかしたら……。
はぁぁ……。
副社長が出かけたあとも、私の心臓はスピードを緩めることなく、ドクンドクンと音を立て続けていた。
緊張しながら副社長室のドアをノックし、扉を開いてタクシーの到着を告げると、副社長はクローゼットのような役員用ロッカーについている鏡を見ながら、ネイビーのピンドットのネクタイを締め直していた。
初めて見るそんな姿に、なぜか見てはいけないものを見てしまったようで、心臓がドキンと大きく反応する。
「分かった。14時には戻るから、夕方のアポイント用の手土産を用意しておいてもらえるかな」
私を見ることなく、手際よくネクタイを締めるモデルのような姿に一瞬見とれてしまう。
わっ、ネクタイを締めてる姿も絵になるよね……。
「山内さん?」
ネクタイを締め終えた副社長が、ドアの前に呆然と立ち尽している私に視線を移した。
「えっ、あっ、はい」
「手土産の中身は任せるから」
「はっ、はい。かしこまりました。ご用意しておきます」
私は副社長室のドアを閉めると、その場から逃げるように急いで自分の席へと戻った。
バクバクバクバクと、心臓がかなりの速さで動いている。
瞬く間にじわじわと身体から汗が吹き出してきた。
顔がとっても熱い……。
私、なんで副社長のネクタイを締めている姿を
ずっと見てしまったんだろう……。
絶対、いつまで見てるんだ!って思われたよね……。
怒られなかったからいいようなものの、
金曜日の夜のことを聞かれたりなんかしたら……。
はぁぁ……。
副社長が出かけたあとも、私の心臓はスピードを緩めることなく、ドクンドクンと音を立て続けていた。