月に魔法をかけられて
「み、美月、どうしよう……。石川さんからLINEが来た……」

「えっ、石川さんから? 何て書いてあるの?」

「そ、それがね……。急だけど、今からごはんどうですかって……」

「彩矢、良かったじゃん! 行っておいでよ!」

私は自分のことのようにうれしくなり、満面の笑みで答える。

「いや無理、絶対無理。それに、美月とごはん食べてるし……」

彩矢が小刻みに首を横に振る。

「私のことなんて全然いいから。彩矢、チャンスだよ。早く!行っておいで」

「やだ。ひとりじゃ無理……。ねぇ、美月お願い……。一緒に来て……」

彩矢が懇願するように顔の前で手を合わせる。

「石川さんは彩矢と2人でごはんが食べたいんだと思うよ。それにもうパエリアだって頼んじゃってるし」

「だったら、ここに石川さんに来てもらうようにしてもいい?」

彩矢が頬をピンク色に染めながら、お願い……と首を横に傾げる。

こんな可愛い顔をして頼まれたら、嫌とは言えなくなってくる。

「それはいいけど……。彩矢はいいの?」

「うん。美月にいてほしいから。絶対にいてほしいから……。ねっ、お願い……」

「じゃあ、お邪魔虫になりそうだったら私帰るからね!」

「わかった。ありがとう美月。ほんとにありがとう」

彩矢はうれし泣きのような顔をして、私に笑顔を向けた。
< 48 / 347 >

この作品をシェア

pagetop