月に魔法をかけられて
やっと黒木さんの嫌味から解放され、カフェテリアでホットコーヒーを購入し、そのままフロアに戻ってきた。

自分の席につき、手に持っていたカップを口に運ぶ。

コーヒーの香ばしい匂いがふわっと漂う。

あー美味しい……。

この会社のカフェテリアのコーヒーは、低価格なのに美味しくて社員から人気なのだ。

外に買いに出なくても、ほとんどの社員がこのカフェテリアでいろんな飲み物を購入している。

そう、ルナ・ボーテの本社は日本橋にあり、地上18階建ての自社ビルで、オフィスフロアの他に、会議室や応接室、展示室やカフェテリア、またオーガニックの野菜や薬膳食材を使った社員食堂やリラクゼーションルーム、地下にはコンビニもあり、全てが揃っている。

私がいる17階のフロアの窓からはスカイツリーも見えて、眺望も抜群だ。

窓の景色を見ながらしばらくぼーっとしていると、机の上に置いていた携帯がぶるっと震え、LINEの通知が表示された。

携帯を手に取り、アプリをタップする。

すると、親友の彩矢(あや)からのLINEだった。

美月(みづき)、今日だけど、18時30分に恵比寿駅の東口で待ってるねー』

メッセージと一緒に、可愛らしいクマのスタンプが、『HAPPY BIRTHDAY』とクラッカーを鳴らしている。

そう、今日は私の27歳の誕生日で、彩矢がイタリアンのお店を予約してくれたらしい。

私は思わず笑顔になり、

『彩矢ありがとう。楽しみにしてるー♡』と返信した。
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