月に魔法をかけられて
食事が終わり、お店を出て副社長と聡さんが話しているところで、私は彩矢の横に移動して腕をつかんだ。

「彩矢、よかったね」

「うん。なんか急にこんな展開になって信じられないけど……。でもすごくうれしい……」

「よかった。ほんとによかった。私もすごくうれしいよ! 」

「うん。美月、ありがとう」

彩矢は何とも言えないくらい、うれしそうな顔で微笑んだ。

すると。

「彩矢ちゃん、タクシー来たよ」

聡さんが彩矢に手招きをしながら優しい笑顔を向ける。

「じゃあ、聡さんにしっかり送ってもらってね。また連絡する」

「わかった。美月、ほんとにありがとね」

彩矢は副社長に頭を下げてお礼言うと、私に手を振りながら聡さんと一緒にタクシーに乗って帰って行った。

彩矢、愛されてるじゃん。
ほんとに良かったね。

タクシーが遠くに走っていくのを見つめながら、私は穏やかな気持ちで微笑んでいた。
< 56 / 347 >

この作品をシェア

pagetop