月に魔法をかけられて
「あっ、ここだ。着いた!」

彩矢がスマホを見ながらお店の名前を確認している。

駅から5分ほど歩いた路地裏のマンションの1階に、彩矢が予約してくれたイタリアンのお店があった。

『Compleanno』と書かれた看板には、小さなイタリアの国旗が描かれている。

「ここね、コンプレアンノっていうお店なの。イタリア語でね、誕生日っていう意味だって。美月にぴったりでしょ!」

彩矢がそう説明しながらお店の扉を開けた。

「いらっしゃいませ」

笑顔の素敵な女性が入り口で温かく出迎えてくれる。

「予約していた田辺です」

彩矢がそう告げると、
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」と言って、奥のテーブルに案内してくれた。

テーブル席が6卓とカウンター席だけの小さな店内。

だけど、テーブルに小さなお花が飾られていたり、壁にはスプーンとフォークの時計が掛けられてあったりと、シンプルだけど可愛い雰囲気のお店で、私たちが到着したときには既に満席になっていた。
< 7 / 347 >

この作品をシェア

pagetop