怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「僕しかいないはずなのに、物音がするようになって。それが、頻繁に起こるようになったんです。最初はあまり気にしなかったのですが、ネットサーフィン中にこの家で起こった昔の事件を知ってしまって……」
「それって思い込みじゃない?」

 はっきりとした物言いに、あかねは驚いた。それを発したのが要だったからだ。秋葉や自分が言うならともかく、オカルト好きの要が幽霊だなんだと騒がずに否定したことに怪訝に首を傾げる。

「家鳴りなんてどこにでもあるんですよ、田中さん。あたしの家だってたまにピシピシ音します。そういうどこにでもある家鳴りを、あなたは最初気にしなかったんですよね? でも、サイトで事件のことを知って気になりだした。何かいるんじゃないかって錯覚に陥ったってことはありません?」

「それは……」
「それに、事前にあたしが調べた結果、事件のあった廃墟は、このペンションが建てられるときに取り壊されてます。普通、建物を建てるときに地鎮祭をしますし、怪死事件があったんですから、お払いはしているはずです。っていうか、しました」
「なんで断言できるのよ?」

 これまで黙って聞いていた中年の女性が声を荒げた。

「ここにはいるわよ、悪霊が! 私には感じるのよ!」
(黙れ、ババア)

 心の中で毒づいて、要はにっこりとした笑みを送った。その要の腕を秋葉とあかねが引いて耳打ちする。

「アンタ、また〝あれ〟やったわね?」
「なんのこと?」
「とぼけんなよ。じゃなかったらなんでそんなこと知ってるんだよ。断言できんだよ? 答えてみろ要」

 二人に咎められて、要は苦笑しながら両手を上げた。振り返りながら、

「ハ~イ、ハイ。まあ、良いじゃないの。あたしの悪趣味のことは今はさ!」

 と、ごまかすと、話を戻した。

「で、お祓いもしてあるし、そうそう出ないんじゃないかなぁって。まあ、いったん追い払われて戻ったって可能性もありますけど。でも、地縛霊って建物に憑いてるって考え方だから、建物自体が取り壊されれば徐々に出なくなると思うんですけどね~」

 軽口をたたくように言った要を、女性は鋭く睨み付けた。そして、大島に向って金きり声を上げる。

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