怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 憤慨した猪口を宥めながら、大島が暖炉のあるリビングを横切って連れて行った。要達の位置からは分からなかったが、リビングを跨いだ右側に廊下があり、二部屋並んでいる。一号室と二号室だった。正面にはユニットバス式のトイレと風呂場、洗面所がある。その上には階段が取り付けられていた。

 田中に案内され、階段を上がると廊下の正面にトイレがあり、階段を挟んで五号室と八号室がある。五号室の隣室は六号室で、八号室の隣室は七号室だった。

「皆さんは、五号室になります」

 田中は五号室を指すと、では僕はこれでと言って階段を下りて行った。
部屋に入るとすぐに、二段ベットが二つ左右に並べられていた。正面には大きめの窓がある。窓の側には丸テーブルがあり、白い猫脚の椅子が二つ置いてある。
 窓の外には森が広がっている。その向こうは海になっていた。日の光を受けて、波が宝石のように光っていた。遥か向こうに地平線が見える。
 建物は、崖の上に建てられていた。

「わあ! すっごいよ。窓の外。絶景かな、絶景かな~」

 要は窓にへばりついて、はしゃいだ。

「夜と朝はもっとキレイらしいよ!」
「あっそう……。あ~……! あたし、もうダメ!」

 あかねは叫ぶと、二段ベットの一段目に倒れ込んだ。

「ちょっと寝るわ」
「本来なら景色見て一番はしゃぐはずの乙女なあかねがねぇ……。低血圧は大変だねぇ」
「そうよ。だから寝たくないのよ」

 キッと要を睨みつけて、あかねはごろりと仰向けになった。

「寝るつもりなかったのに、なんで寝ちゃったのかしら?」
「あ~。あたしも同じ。寝るつもりなかったのに気づいたら寝てた」
「俺は寝るつもりあったぞ」
「そりゃ、秋葉はそうでしょうよ」
「くだらないこと言うと殴るわよ。私、今機嫌悪いんだから」
「あっはは、ほんと二面性」
「うっさい要!」
「ああ、ハイハイ。でも、おかしいんだよね。あたしも今も重だるくて眠いんだよ」
「めずらしいな。要は寝覚めは良い方だろ?」
「まあね。元々睡眠時間なくても大丈夫だし」
「睡眠時間三時間でも良いんだっけ? 本当、うらやましいわ。あたしなんか、起きると二時間くらい眠いしだるいけど、ばっちり睡眠時間とらないともたないのよね。日中」
「あかねは、案外病弱よね」
「美人ってそういうもんでしょ」

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