怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 冗談交じりに髪を掻きあげると、三人は一斉に笑い出した。一瞬の沈黙が訪れて、

「じゃあ、私寝るわ。静かにしてね」
「了解。じゃあ、あたしちょっくら探検してくるわ」
「了解。俺ももう一眠りするわ」
「アンタは寝すぎ」

 あかねがつっこんだが、秋葉はもう片方の二段ベットの下段に横になった。要はそっとドアを開けて出て行った。

 部屋を出ると要はまず隣の六号室に向った。ドアノブを回したが、開かない。誰か先客がいるのか、それとも空室にも鍵をかけているのかと一瞬考えたが、すぐさま向かいの八号へ向う。そこが開けば、どちらかなのかはすぐに判明する。

八号室のドアノブを捻るといとも簡単に開いた。どうやら、六号室には先客がいるらしい。

肝心の八号室の部屋の造りは五号室と変わりがなかったが、八号室の窓からは絶景は見られなかった。玄関側の部屋のため、庭が見えるだけだ。すぐ下に要達が乗ってきたワゴンが止まっている。

 円形にかたどられた庭の周りは森で囲まれていた。庭には雑草がポチポチと生えているが手入れはされているようだった。
 森を避けるように門があった。古びた鉄柵の門だ。門は開け放たれていた。この八号室よりも隣室の七号室の方が門には近い。

 要はなんとなく七号室から庭を眺めたくなって、隣室へ移った。
七号室の造りはやはり他と大差はない。近くなった門を眺めていると、ジープが庭の門から入ってきた。

 ジャリジャリと小石を踏み潰しながら、ジープは部屋のすぐ下で止まった。誰かが運転席から降りて来たのが見えたが、誰かはよく分からない。後部座席か、助手席か、他にもドアが開く音がして、要は下へ降りた。

 一階へ下りると、数人が玄関にいた。大島と田中が応対をしているようだった。二人を除けば全部で三人だ。細身の中年女性と、恰幅の良い中年男性。二十代の若い女性だ。

「あれ? 一緒に出た子はどうしたんですか?」

 田中が尋ねると、男性がああと頷いて、

「その辺を散策しながら帰って来るそうだ」
「そうですか……」

 少し心配そうな顔をした田中の肩を大島が優しく叩いて、微笑む。

「大丈夫よ。展望台からは一本道なんだから」
「そうですね。道沿いにくれば、迷うようなところじゃないですからね」
「でしょ」

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