怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 要は頷いて、秋葉の横に座った。ひそひそ声で、秋葉が話しかける。

「収穫は?」
「あった。別のやつら来たよ」
「へえ、どんなやつらだ?」
「胡散臭い、自称霊能力者」
「そりゃまた、俺らの嫌いな連中だなぁ」
「でしょ」

 要は軽く頷くと、立ち上がった。ベットサイドに置いてあった中型のキャリーバックを開けてノートパソコンと小型のWⅰ―Fⅰルーター(通称ポケットWⅰ―Fⅰ)を取り出す。
 パソコンを開くと、秋葉が心配するように声をかけた。

「おい。またあれやる気か?」
「だって、気になるんだよ」

 おちゃらけた調子で言った要だったが、瞳はどこか真剣だった。秋葉はその様子を察したのか、肩を竦めて、

「じゃあ、しょうがねえか」
「あら。止めないの?」
「俺はあかねみたいな正義感はないからな。それに、どうせバレないんだろ?」
「分かってるじゃなーい。秋葉!」

 陽気に秋葉の肩を叩くと、要は立ち上がったパソコン画面からインターネットに繋いだ。パチパチと片手でキーボードを打ちながら窓際のテーブルまで来ると、パソコンを置いて椅子に座る。
 秋葉は何気なくそれを見送ると、また漫画に目線を移した。

 要は素早くキーボードを叩く。初めは大島の名前を検索にかけた。フェイスブックが見つかったが、自撮りがいくつかあるくらいだ。出身地についての情報も、どこの学校に通っていたのかも載っていない。

 自撮りもわざと避けたかのように場所を特定するものは一枚もない。写真をダウンロードし、瞳を拡大したが、写り込んでいたのは店の照明なんかで、大したものは映っていなかった。

 次に要はラインを開いた。以前、大島に送っていたグルメサイトのURLをコピーして貼り付けをし、最後尾に何かを打ち込む。エンターを押すと、大島の写真やこれまでのライン、メール、動画がパソコン内に流れ込んでくる。

「ハッキング成功したか?」
「クラッキングだよ。秋葉」

 他人のパソコンやスマートフォンに不正にアクセスすることを、クラッキングと呼ぶ。多くの人がハッキングだと思っているが、それは間違いだ。ハッキングは本来エンジニアリングという行為そのものを指す言語だった。

 だが、その間違いが世間に広まっているため、クラッキングを行う者をブラックハッカーなんて呼んだりもする。

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