怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
 呟いた要は、思わず感涙しそうになったが、あかねが既に目尻を拭い、秋葉が号泣しているのを見て涙は引っ込んだ。気恥ずかしいような呆れたような気分で、要は話題を振った。

「ところで由希、ここに何かいる?」
「うん……」

 由希は訝しい表情で首を捻る。

「わたし、幽霊視ると必ず体調崩してたでしょう?」
「ああ、しんどそうだったな。強烈なやつに遭うと倒れてたもんな」

 秋葉が眉を顰める。

「良い霊でも頭痛くなったり、吐き気がしたりしてたんだもんね」

 心配そうにあかねが由希を見つめた。

「なんかね、留学先の先生の話に寄れば、わたしは霊と周波数のようなものが合いやすいみたいで、それで視たりしてたらしいんだけど、向こうの思念が強いとあてられちゃって、それで体調が悪くなったみたい。だから、まずはこの三ヶ月間は意識してそれをずらしてみることをしてたの。だから、幽霊がいる気配は感じるけど、今は視えないんだ。だけど……」

 言いよどんでから、由希は振り返ってペンションの角をじっと見た。つられて要達も振り返る。

「昨日、ここに来たとき、嫌な感じじゃないんだけど、どこか気になる気配があって、少し波長を合わせてみたの。そしたら、ペンションの角に隠れるようにパーカーを着た女の子がいたの。すぐに消えちゃったんだけど、すごく心配そうな顔をしてたから、なんとなく気になって……」

 表情を曇らせた由希に、要は窺うように尋ねた。

「その子は今もいるの?」
「ううん。今はいない。彼女の気配もないみたい。でも、もう一つ、変な気配は感じるんだよね。でも、それがどんなもので、何人なのかは分からない。今、わたしは意識的に〝視ない〟ようにしてるけど、幽霊は初め、知らない人が来ると息を潜めることが多いんだって。だからなのか、その気配も弱いよ」
「そうなのか……。でも、じゃあ、いることはいるんだな」

 秋葉は意味深に呟いた。あかねは頬が強張り、ペンションから目線を外す。秋葉もあかねも表情が硬かったが、要の瞳は輝いていた。由希はふと要に視線を送る。わくわくしているような表情は、上辺だけの作り物のような感じがした。由希には、要は何か隠しているような気がしていた。

「ところで、由希はずっとペンションにいたの?」

 これ以上考えると怖くなる一方だからか、あかねは話をそらした。

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