怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「ううん。ずっとじゃないよ。さっき、上河内さん達と展望台に行ってたんだ。ここから車で二十分くらいのところ。展望台から先はもう道がなくて先に進めなかったんだ。それで、景色を眺めて引き返して来たんだけど、わたしは帰りになんだか歩きたくなったから、歩いて帰って来たの」
「そうそう、田中さんが心配してたわ」

 要は思い出したように、軽く言った。

「そうなんだ。なんか悪いことしちゃったかな。でも、特に危険な道とかじゃなかったよ。崖沿いだし、砂利道だけど、車が通れる幅はあるし。他に道がなくて一本道だし。でも、行きは坂続きだし、急だから歩いたら大変かも知れないけど」
「へえ、ねえ、そこ行ってみない?」
「今から?」

 迷惑そうな声音を出したあかねは、あからさまに坂を上りたくないという文字が顔に浮かんでいる。

「もうすぐ昼飯だろ。車で片道二十分なら、歩いて一時間くらい掛かるだろ。俺、腹減ったんだよなぁ」

 お腹を擦った秋葉にため息をついて、要は項垂れた。

「まあ、あたしもお腹は減ってきてるけど。ノリが悪いなぁ、夫婦は」
「誰が夫婦だ!」

 要がおちゃらけ、二人がつっこんで、由希が口元を押さえて笑う。日常が戻ってきたような気がして、四人はなんだか嬉しかった。

 *

 結局四人はその場でくっちゃべってしまい、散策へは出かけられなかった。昼の時間になったので引き返したところ、玄関で大島にご飯が出来たと声を掛けられたので、昼食を摂った。昼食は田中が作り、大島が手伝ったらしい。

 乳製品アレルギーがある田中だけはレトルトカレーだったが、その他は皆同じメニューだった。

 クリームシチューを囲んだ食卓は、大変ギスギスしていたので、要は味をあまり覚えていなかった。それはあかねと由希も同じだが、二人はその雰囲気の悪さに胃粘膜と味覚が拒絶を示したからで、要の場合は好奇心が優り、周囲の様子を観察する方に気が向いたからだった。

 ちなみに秋葉は気まずい雰囲気などなんのその。クリームシチューを大変美味しく頂いた。しかも、おかわりをした。

 イヤな雰囲気の原因は、ジャブダル内場一派、特に上河内と猪口すみれがかもし出す敵対心だった。それは、ジャブダル一派である笹崎も戸惑うほどだ。

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