怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
耳を劈く悲鳴が上がる。一瞬、暗闇の中を炎が踊っているように見えたが、すぐにそれは人の腕が燃えていて、その人が火を振り払おうと腕を振っているんだと気づいた。炎に照らされて、焦った様子の大島が浮かび上がった。
「バケツ! 早く!」
大島の金切り声が聞こえ、猪口がしゃがみ込んだ。そのときだった。炎が一瞬で大島の身体を駆け上る。
「キャアアア!」
絶叫しながら、大島が駆け出した。火達磨になりながら、後ろの暖炉にぶつかって転ぶと、ゴロゴロと床を転げまわる。
「消して! 早く消して!」
笹崎の悲鳴めいた声が上がり、どこからか大島の体にバケツ一杯の水が掛かる。だが、それでは足りず、しつこく大島の上半身に炎が巻きついている。
あかねが駆け出した気配がした。それに続いて数人が走って行く。何人かがリビングの段差に躓いた音がした。
「電気つけて!」
要が叫んだ。
「つかないわ!」
上河内が切迫した声音で言いながら、何度も何度も電源のスイッチを叩く音がする。
「そっちじゃない! ブレーカーの方! 田中さん早く!」
「は、はい」
狼狽しながら、田中が小さく返事を返すと、駆けて行く音がする。同時に、あかねが息を切らして戻ってきた。大島の体にシンクに置いてあったタライで水を掛けると、秋葉も駆けてきて鍋一杯の水を撒いた。矢継ぎ早にジャブダルがフライパンに入れた水を掛けると、やっと炎は弱まる。そこに、要が魔法円に使用していた布を剥ぎ取って秋葉に投げる。布の上に置いてあったコップや小皿が床に落ちる音がした。秋葉とジャブダルは布で大島の身体を叩いて火を止めた。
「なんなのぉ、なんなのよぉ!」
パニックになって泣き叫ぶ笹崎の声が聞こえて来たが、慰める者は誰もいなかった。誰もが呆然としてしまっている。
だが、要だけは大島に近づき、安否確認を取ろうとした。それを由希が引き止めた。腕にしがみついて、苦しげに囁く。
「要ちゃん……変なのいる」
ずるりと由希の体が崩れ落ちる。
「由希!?」
「由希がどうしたの?」
「なんかあったか?」
再び暗闇に包まれた室内は真っ暗で手を伸ばす先も分からない。要はそっとしゃがんで、ゆっくりと手を動かす。由希の唇に指先が触れて、吐息がかかった。
(良かった。気絶か)
要は、小さく息を吐いて、秋葉とあかねに答える。
「バケツ! 早く!」
大島の金切り声が聞こえ、猪口がしゃがみ込んだ。そのときだった。炎が一瞬で大島の身体を駆け上る。
「キャアアア!」
絶叫しながら、大島が駆け出した。火達磨になりながら、後ろの暖炉にぶつかって転ぶと、ゴロゴロと床を転げまわる。
「消して! 早く消して!」
笹崎の悲鳴めいた声が上がり、どこからか大島の体にバケツ一杯の水が掛かる。だが、それでは足りず、しつこく大島の上半身に炎が巻きついている。
あかねが駆け出した気配がした。それに続いて数人が走って行く。何人かがリビングの段差に躓いた音がした。
「電気つけて!」
要が叫んだ。
「つかないわ!」
上河内が切迫した声音で言いながら、何度も何度も電源のスイッチを叩く音がする。
「そっちじゃない! ブレーカーの方! 田中さん早く!」
「は、はい」
狼狽しながら、田中が小さく返事を返すと、駆けて行く音がする。同時に、あかねが息を切らして戻ってきた。大島の体にシンクに置いてあったタライで水を掛けると、秋葉も駆けてきて鍋一杯の水を撒いた。矢継ぎ早にジャブダルがフライパンに入れた水を掛けると、やっと炎は弱まる。そこに、要が魔法円に使用していた布を剥ぎ取って秋葉に投げる。布の上に置いてあったコップや小皿が床に落ちる音がした。秋葉とジャブダルは布で大島の身体を叩いて火を止めた。
「なんなのぉ、なんなのよぉ!」
パニックになって泣き叫ぶ笹崎の声が聞こえて来たが、慰める者は誰もいなかった。誰もが呆然としてしまっている。
だが、要だけは大島に近づき、安否確認を取ろうとした。それを由希が引き止めた。腕にしがみついて、苦しげに囁く。
「要ちゃん……変なのいる」
ずるりと由希の体が崩れ落ちる。
「由希!?」
「由希がどうしたの?」
「なんかあったか?」
再び暗闇に包まれた室内は真っ暗で手を伸ばす先も分からない。要はそっとしゃがんで、ゆっくりと手を動かす。由希の唇に指先が触れて、吐息がかかった。
(良かった。気絶か)
要は、小さく息を吐いて、秋葉とあかねに答える。