怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「なんてって……」
「これは、霊の仕業よ。交霊会の最中に自然に火が点いて大島さんは亡くなったんだもの。でも、警察が信じると思う? 私達が疑われるわよ」
「何言ってるんですか、猪口さん」

 咎めた笹崎を猪口は睨みつける。

「一番疑われるのはあなた達よ。今回の交霊会はあなた達が開いたものでしょう」

 ジャブダル、上河内、笹崎は互いに顔を見合わせた。ばつが悪そうにしてから、ジャブダルが反論する。

「だが、今回のことは事故に過ぎんだろう。呼び寄せた霊が暴走して人間に火を点けるだなんて誰が思うね。想定外の事故だよ」
「だから、それを警察が信じるのかって言ってるのよ。そんなこと常識的に考えて起こりえないでしょう。私達の誰かが大島さんに火を点けたって思われるのがオチよ。私は、あんた達のせいで詐欺呼ばわりされて警察に連行されたことがあるから解るのよ。あいつらは霊障なんてこれっぽっちも信じてないんだから!」

(なるほどね。猪口さんがジャブダルさん達を恨んでる理由はネックレス販売の妨害をされたからだけじゃなく、警察のご厄介にまでなっちゃったからなのね)

 要は納得しながらも、表情には出さず、棘のある声音で口を挟んだ。

「じゃあ、猪口さんはどうするおつもりで?」

 猪口は硬い表情で要を見据える。だが次の瞬間、はっきりとした口調で告げた。

「……隠しましょう」
「バカ言わないでよ! ねえ、先生?」

 笹崎が猪口に噛み付いたが、話を振られたジャブダルは思いつめた表情を浮かべている。

「……先生?」
「これは、霊の仕業に違いない。だが……私達のせいにされるわけには……」

 妙な雰囲気が辺りを包む。誰かが猪口に賛同すれば、一気に傾いてしまいそうな危うい空気が流れていた。だが、次の瞬間それは一蹴された。

「くだらないこと言ってないで、さっさと警察に通報しなよ」

 要が鼻で笑って田中を見据える。軽蔑的な視線に、田中は思わず慌てて頷く。

「そうだぜ。大人なら何が正しいのかくらい解るだろ。霊の仕業だろうが、人一人死んでるんだぞ」
「大島さんにも家族やお友達がいるはずです。荼毘に伏せ、きちんとお別れをするべきです。でなければ、大島さんも残された遺族も救われないと思います」

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